ご用件は何ですか(主訴)?
目的
病院へゆく。
そこには、目的があります。
目的は、何でしょうか?
主なる目的のことを、このギョーカイ用語で「主訴」といいます。
文字通り、主たる訴えです。
オナカが痛いのを何とかならないか。
熱がでてきた。
ヒザがうまく曲がらなくて正座ができない。
眠りたいのにねむれない。
疲れやすくて仕方がない。
ウンチがちゃんと出てくれない。
食欲がわかない。
肌荒れが気になる。
腰が痛い。
たくさんの主訴(病院にゆく目的)があります。
解決したいもの、ともいえます。
買い物だって、同じですね。
新しい服がほしい。
旅行にもってゆくバッグがほしい。
夕食のおかずをそろえよう。
何となく、ブラブラと回ってこよう。
いろんな目的あり。
気がついたら買い物に来ていた、ということはないでしょう。
主訴からはじまる
教育病院では、症例検討会というのがあります。
ある患者さんをとりあげ、みなでディスカッションをしてゆきます。
大切な勉強の場です。
そのスタートに「主訴」があります。
80歳の男性です。
主訴は「右手の握力が急におちたこと」です。
というような提示から話がはじまります。
これを何とかならないか、ということです。
そこから、患者さんのモロモロの説明。
情報がそろったところで、議論がはじまります。
体の中で、どんなことが起こっているのか。
確定診断には、どんな検査が追加で必要か。
鑑別してゆく病気には、どんなものがあげられるか。
そして、どんな最終診断が妥当か。
その結果、どういう治療方針でのぞむか。
こういうことを繰り返して、勉強してゆくわけです。
そして診断精度や治療効果を高めてゆきます。
繰り返しますが、「主訴」からはじまる。
目的は大切
つまり、スタートには「主訴」があります。
主訴とは、病院にくる「目的」です。
目的は大切です。
目的がブレたら、行き着けないこともあります。
とくに目標が大きければ、大きくなるほど。
富士山にのぼるぞ。
そういう「目的」をもったひとだけが、富士山のテッペンにたてます。
ゾーリばきで散歩がてらブラブラ散歩。
気がついたら、富士山の頂上にたっていた、ということはありません。
主訴をしっかり把握する。
主訴から、さまざまな鑑別診断をおこなってゆく。
アレではない、コレでもない。
主訴をぶらさない。
医学教育の基本です。
つながり
ところがです。
東洋医学につかっていると、主訴の立ち位置が変化してきます。
もちろん、主訴は大切です。
解決したい目標ですから。
ただ、主訴の重さが、かわってくるということです。
あるいは、立ち位置。
たとえば、「便秘」をよくしたい、という主訴。
便秘にこまっている。
だから、すっきり出したい。
便秘というのは、便が詰まっている状態。
ならば、便を出しやすくする薬をだしてみますね。
そういう西洋医学的な「直球」の発想じゃなくなってきます。
というより、「直球」の発想が通じません。
便秘「以外」のはなしをうかがうことになります。
いったん、主訴からはずれる。
しかも、けっこう大きく。
冷え症はありませんか。
夜はよく眠れますか。
肩はこっていませんか。
疲れやすくありませんか。
腰は痛みませんか。
疲れやすくありませんか。
ゴハンはおいしく食べられますか。
散歩はしますか。
どんなお仕事をしてますか。
イライラはありませんか。
女性だったら生理のことも。
まあ、いろいろです。
それらの中から、「つながり」を考える。
関連性を、アタマの中で、構築してゆく。
そうして、体がどんな状態になっているのかを想像してゆく。
その「状態」は、望ましいのか。
あるいは、もうちょい、変化した方がいいんじゃないか。
変化が必要なら、どっちの方向への変化がよいだろう。
その変化を手助けする手技療法はないか(体に直接作用)。
手助けする葉っぱや根っこはないか(これが漢方)。
そして、変化をうながす。
そのなかに、便秘の薬は何も入っていないこともあります。
でも、なぜかお通じが快調になる、こともある。
同時に、からだに次々と変化が。
体の中のものごとは、すべてがつながっている。
だって、同じ体内ですから。
そのつながりの中に、主訴も入っている。
そう思えます。
ただそのために、はなしが長引いてしまう。
でも必要な長ばなしです。
ご容赦ください。
おまけ:岩手銀河ウルトラマラソン2025
岩手の地で、おバカな100キロマラソン大会。
そこに惹きつけられて、今年も来てしまった6月8日。
東北の背骨、北上山地のふもと北上市。
そして宮沢賢治の故郷。
そこを出発点に、なめとこ山を乗り越えて一路北へ北へ。
めざすは100キロ先の雫石町。
ゼッケン番号は「855」番。
わたしの指定番号です。
このおバカな100キロコースを5回完走すると、自分の好きな3ケタの番号がもらえる仕組みです。
長嶋もと巨人軍監督の「3」のようなもの。
わたくし、いただいています。
土曜日の診療を終えると、岩手へ。
午後7時半にホテルに着き、午前1時半にはホテルをたつ。
そして、午前4時にスタート。
朝は、あわただしいです。
そして睡眠不足。
さあ、ゴールまでの制限時間は14時間。
長いようで、あっという間です。
最初は、田園地帯。
カエルの声がにぎやかです。
やがて、なめとこ街道に入ると、山の影がこくなってゆきます。
熊鈴を鳴らしながら走るランナーもいます。
コースの特徴は、のぼりが多い、ということでしょうか。
3分の1くらいはのぼっている、そんな体感です。
そののぼり坂を、どれだけ歩かずに走りつづけられるか。
時間内完走の、重大なポイントです。
さあ100キロスタート、ヘンタイさんたちの集合写真
GPS時計で記録した高度地図。のぼりが多いです。
カンカン
うすぐもりのスタートが、気がつくと青空です。
日差しがきつい。
カンカン照り。
30キロ過ぎの、おそらくコース上、唯一のミニコンビニ風のお店。
立ち入って、アイスを購入。
ペロペロ楽しみながら、まだ余裕ラン。
暑くなって、とりだしたタオル。
最初は、首にまいて走ります。
やがて日差し対策で、ほおかむりへ。
コソ泥の逃亡中のようです。
中間点あたりになると、傾斜もきつくなります。
さすがに走れません。
歩きモードで、ハアハア。
ひと雨欲しいなあ。
足元を見れば、クッキリとうつる自分の影としたたる汗。
見上げれば、吸いこまれそうな大空。
なめとこライン手前のエイド。その前に「かぶり水」を頭からザブーン(20キロ)。
アイスをぺろぺろ走行。まだ余裕(30キロくらい)
だんだん坂がけわしくなって、スピードが落ちます。
木かげ、ひなた、のぼり坂。
むこうが宮沢賢治の「なめとこ山」、眺める余裕なし。
ただひらすら走る、いえもとい、歩く。ゼーハー。
平らになっても、スピードがのらない、疲労感満載。
またしても
のぼりきれば、次に待つのは、急なくだり坂。
人生には、3つの坂がある、というのは定番です。
のぼり坂。
くだり坂。
そして、まさか。
くだって、そのままなら楽走です。
が、小さなアップダウンの連続。
そして、ジワジワののぼり基調。
けっこう、こたえてきました。
スピードが落ちているのがわかります。
最近の、いつものパターンです(苦笑)。
正式な途中関門場所は、5カ所。
そこを時間内に通りすぎないと、アウトです。
さらに、小さなルールがありました。
80キロ地点の、山道上の小さなエイド。
ここは11時間以内に通りすぎること。
うーん、わずかに11時間をこえています。
「超えましたね」
「んだな」
エイドのおじさん、ニコニコ。
ファイティングポーズをとれば、通してもらえる雰囲気です。
正式な関門ではないので、ゆるいです。
でも、ここからしばらくは、のぼりです。
いさぎよく、コーサン。
ちから尽きました。
回収バスを待つ間、やたら蚊に刺されまくり。
泣きっ面に蚊、でした。
100キロマラソン、完走失敗記録更新中。
ありがたくない記録です。
もはや、完走は無理なお年頃か。
いやいや、気持ちだけはまだ。
スタート前の、まだまだ余裕の一画面。
あじぃー、としかいえないような体熱感、熱中症にご注意。
66キロ、コース上の最大エイド、まだ笑える。
80,6キロ、時間オーバー。オーノー、としか(ヘンなオッチャン)。
でもしっかり支えてくれたお足です、感謝。
